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障害児保育についてもっと知りたい!子どもの発達障害の種類や保育士ができる支援内容を紹介
「障害のある子どもと、どう接したらいいの?」
障害児保育を行う保育園の増加に伴い、クラスに特別な配慮が必要な子どもがいるのは、珍しいことではなくなってきました。
保育士には、障害に対する深い知識と理解が求められますが、通常の保育と勝手が違い、冒頭のように悩むケースも少なくないようです。
そこで今回は、保育園における障害児保育の内容から、障害の種類、障害児保育を行う上で大切なことについて解説します。
保育園以外の、障害児支援施設での働き方についても紹介しますので、障害児保育に興味のある保育士は、ぜひ参考にしてくださいね。
ほい子
出産によるブランクから復職した保育士。手遊び歌のレパートリーの多さが自慢。
ほいくろにゃん
ほいく畑に住みついた、黒ネコずきんのいきもの。保育業界に詳しく、ほい子のよき相談役。猫がテーマの手遊び歌だとノリノリになる。
障害児保育とは
障害児保育とは、心や体に障害を持つ子どもの保育をすること。
近年、発達障害など、何らかの障害があると診断される子どもが増加しており、一般的な保育園や認定こども園でも、障害児保育への対応が求められています。
■保育所等における障害児保育の実施状況の推移
令和3年の時点で、障害児保育を実施している保育所などは、全国で約2.1万件。受け入れている障害児の数は約8.6万人に上ります。
障害を持つ子どもがクラスに1~2人いることも珍しくなくなっている今、保育士としても、障害児保育についての理解を深めていきたいですね。
保育士が知っておきたい、子どもの発達障害
障害には、身体障害や精神・知的障害など、様々な種類がありますが、障害児保育に対応している保育園では、発達障害がもっとも多いという調査があります。
■障害児の障害の種類
そこで、この章では、主な発達障害の種類と特徴を見ていきましょう。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)は、自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群の総称です。特定の物事への強いこだわり、コミュニケーションが困難といった特徴があります。
ASDの子どもは、突発的な出来事や知らない場所・人が苦手で、不安のあまり大声を出すなど、奇抜な行動をとることがあります。
落ち着ける環境で、興味のあることなら意欲的に取り組める場合もあります。特定の分野で、大人顔負けの専門知識を身に付けたり、優れた才能を発揮する子どももいます。
注意欠如・多動性障害(ADHD)
注意欠如・多動性障害(ADHD)は、集中力や記憶力の乏しさや、落ち着きのなさが際立つのが特徴です。
ADHD の子どもは、じっとしていられずクネクネと動いていたり、おもちゃの貸し借りのルールが守れず友達とトラブルになったりしがちです。
できないことを叱るのではなく、できたことを褒めて自信をつけさせることで、徐々に落ち着いてくる場合も。他の人にはないユニークな発想や行動力で、成長してから活躍する子どももいます。
学習障害(LD)
学習障害(LD)は、知的な発達の遅れは見られないにもかかわらず、読み書きや計算など、特定のことだけができないのが特徴です。
LDの子どもは、努力しても学習が追い付かず、コンプレックスを抱え、進学、就職と大人になっても厳しい状況が続くことがあります。
最近は、学習プログラムを取り入れている保育園も多く、早期にLDと判断される場合もあります。家庭や医療機関、地域の子育て支援機関と連携してサポートすれば、生きるために必要な力を幼児期から育んでいけます。
子どもの発達障害は、上記の種類や知的障害が少しずつ重なり合って現れ、明確に障害の種類を特定しづらいことがあります。
障害についての正しい知識を身に付けるのはもちろん大切ですが、保育士として、障害に関わらず、子ども1人ひとりの個性に寄り添った保育を心がけたいですね。
たとえ障害があっても、子どもに合った指導案をもとに保育をすれば、その子なりのペースでちゃんと成長できるのよ。
障害じゃなくて、子どもの個性って考えればいいのかな。
そうね。その上で、状況に応じた配慮をすることで、障害児の生活の困難を軽減できるわ。
なるほど!実際に障害児保育を行っている保育園では、どんな配慮をしているのかしら。
次の章で、説明するわね。
保育園における障害児保育とは
障害児保育を行っている保育園では、主に、下のような子どもを受け入れています。
- 障害者手帳を持っている
- 障害の程度が軽~中程度で集団生活ができる
※自治体により受け入れ条件は異なります。
受け入れ人数は、保育園にもよりますが、1~2名のことが多いでしょう。
障害児保育では、「統合保育」として、通常の保育活動をしながら、障害児に対して行き届いた配慮ができるよう、複数担任制や「加配保育士」など、保育士の数を増やすことで対応しています。
では、統合保育と加配保育士についてお伝えしましょう。
統合保育
障害児保育に対応している保育園では、統合保育の取り組みをしています。
統合保育とは、障害児と健常児を一緒に保育すること。障害児には、専任の保育士を配置するなど、特別な配慮をしながら、集団生活を行います。
統合保育を行うことで、障害児にとっては、同年代の子どもとの関わり方や社会のルールを覚えるきっかけになりますし、健常児には、障害に対する理解や助け合いの精神を育むのに役立ちます。
統合保育は、障害児が大人になってからも生活しやすい社会をつくる基盤として、とても重要だと考えられます。
インクルーシブ保育について
統合保育と似た取り組みに、インクルーシブ保育があるわ。
インクルーシブ保育は、年齢や国籍、障害のあるなしに関わらず、同じ環境・空間で保育を行うこと。学生時代の「縦割り学級」で、インクルーシブ体験をした人もいるかもね。
「みんな違ってあたりまえ」「相手の考えを尊重する」「困っている人は助ける」などの考えや行動を自然と身に付けるのが狙いなのよ。まだ日本ではあまり広まっていないけど、グローバル社会においては不可欠な価値観ね。
加配保育士
障害があるなど、個別の配慮が必要な子どもを専門に保育するのが加配保育士。多くが、子どもの障害についての専門的な知識やサポートの経験があるベテランです。
保護者からの申請や、保育園の判断により、通常の保育園の人員基準にプラスして配置されます。加配保育士の配置基準は、自治体により違いますが、おおむね障害児1~3名に対し加配保育士1人です。
加配保育士は、子どもの特性や発達の状況に応じて個別の保育計画を作成し、集団の中で穏やかに園生活を送れるよう、きめ細かに配慮します。
加配保育士との関わりの中で、
「子どものタイミングに合わせた声かけで、トイレトレーニングが成功した」
「友達との関わり方をていねいに教えて、ケンカをしなくなった」
「たくさん褒めることで、園活動にやる気を見せるようになった」
など、子どもの成長にプラスに働く例が多くあります。
加配保育士は、子どもの発達について保護者からの相談に乗ったり、他の保育士と連携して障害児がクラスの集団に溶け込むのを助けたりと、障害児保育のキーパーソンとして活躍します。
障害児保育で大切なこと
この章では、障害児保育に関わる上で、保育士として大切にしたいポイントを3つお伝えします。
子どもを観察し理解する
子ども1人ひとりにしっかり目配りするのは、障害児保育に関わらず、保育士としての基本です。
「この子は何が好きで何が苦手か」「こういう時はどういう行動をしがちか」など、日ごろの観察から得た気づきをもとに、どんなサポートをすればいいかを考えましょう。
指示がなかなか通らないと、焦ることもあるでしょうが、子どもなりのペースを理解して、落ち着いた対応を心がけましょう。
保護者とコミュニケーションを取る
障害児保育では、子どもの障害の特性や家庭での様子、配慮してほしい事柄、子どもの好みやこだわりなど、保護者から詳しくヒアリングしましょう。
子どもの状態に合わせた配慮がしやすくなりますし、他の子どもとのトラブル回避にもつながります。
連絡帳や送迎の際などに、こまめに子どもの様子を伝えたり、保護者からの相談に乗ったりして、信頼関係を築き、安心して預けてもらえるようにしましょう。
障害児保育について学ぶ
障害児保育に向き合うには、障害についての知識や支援内容をきちんと学ぶことが大切です。
本コラムでも、発達障害や統合保育の考え方についてざっくりとお伝えしましたが、障害児保育について、より深く学ぶには、「保育士等キャリアアップ研修」の受講がおススメです。
保育士等キャリアップ研修で学べるのは、保育に関する8つの専門分野。そのうち、「障害児保育」の分野だけを選んで受講も可能です。
■保育士等キャリアアップ研修の8分野
(1)乳児保育(2)幼児教育(3)障害児保育(4)食育・アレルギー対応(5)保健衛生・安全対策(6)保護者支援・子育て支援(7)保育実践(8)マネジメント
保育士等キャリアアップ研修は、学んだことを実際の保育に役立てるだけでなく、キャリアや給料アップにもつながります。
▼保育士のキャリアアップについてもっと知りたい方はこちら
転職や再就職の際にも、保育士のスキルの証明として、全国どこでも通用しますので、早めに受講しておきたいですね。
保育士にとってのお役立ち情報を定期的に発信している「ほいく畑」では、保育士の就・転職も応援しています。
障害児保育を実施している保育園や認定こども園、学童保育など、たくさんの保育士求人の中から、あなたの希望に合った職場をご紹介できます。
転職をお考えの際は、ぜひ一度「ほいく畑」にご相談ください。
一般的な保育園では対応が難しい障害児のための保育施設もあるのよ。
そうなんだ!そこでも保育士が活躍してるの?
もちろんよ。機能訓練指導員や児童指導員、看護師などの専門職と連携して、障害のある子どもサポートしているわ。
気になるわ。どんな施設なのか教えて!
障害児のための保育施設とは
就学前の障害を持つ子どものための保育施設として、児童発達支援施設があります。
この章では、児童発達支援施設の役割と、保育士の仕事内容などをご紹介します。
児童発達支援施設とは
児童発達支援施設には、「児童発達支援事業所」と「児童発達支援センター(福祉型・医療型)」があります。
どちらも児童福祉法に基づく、障害児のための施設です。
対象年齢は、小学校に上がる前の0~6歳児。障害者手帳がなくても、地域の保健センターや児童相談所、病院などで、発達支援が必要と判断された子どもが通うことができます。
児童発達支援事業所では、事業所に通う障害児やその家族への支援を行います。
児童発達支援センター(福祉型)では、上記に加え、地域の保育園や認定こども園に訪問して障害児保育を支援や、障害を持つ子どもの家族に対して相談・援助を行います。児童発達支援センター(医療型)では、医療的ケアに対応しています。
それぞれの施設の役割と人員基準を以下の表にまとめてみました。
■児童発達支援施設の役割と人員基準
施設種別 | 児童発達支援事業所 | 児童発達支援センター(福祉型) | 児童発達支援センター(医療型) |
---|---|---|---|
役割 | 障害児の日常生活の支援と自立に向けた取り組み。保護者への相談・援助 | 児童発達支援事業所の役割に加え、地域の障害児保育のサポート | 児童発達支援センターの役割に加え、医療機能を備える |
人員基準 | ■保育士or児童指導員:2人以上 ■児童発達支援管理責任者:1人以上 ■管理者:1人(兼務可) ※必要に応じ ■機能訓練担当職員 ■看護職員 |
■保育士:1人以上 ■児童指導員:1人以上 ■嘱託医:1人以上 ■児童発達支援管理責任者:1人以上 ■管理者:1人(兼務可) ※必要に応じ ■栄養士 ■調理員 ■機能訓練担当職員 ■看護職員 ■言語聴覚士 |
■医療法に規定する診療所に必要とされる従業者 ■保育士:1人以上 ■児童指導員:1人以上 ■理学療法士または作業療法士:1人以上 ■看護職員:1人以上 ■児童発達支援管理責任者:1人以上 ■管理者:1人(兼務可) ※必要に応じ ■機能訓練担当職員 |
※表は「児童発達支援センター等の現状等/厚生労働省」を参考に当社が作成。
児童発達支援施設では、保育士をはじめ、児童指導員や看護師、機能訓練指導員など、様々な分野の専門家が協力し、障害児の成長を支えます。
児童発達支援施設での保育士の仕事内容
児童発達支援施設では、保育士は以下のような仕事に携わります。
- 食事や着替え、トイレなどの日常生活に必要な動作の指導、援助
- 集団生活への順応やコミュニケーション向上のための訓練
- 知育や身体能力の向上を目的とした遊びの提供
- 季節の行事、イベントの計画・実施
- 日々の記録や連絡帳の記入など事務作業
- 保護者の支援
- 多職種とのカンファレンス
児童発達施設に通う子どもの障害や発達の状況はそれぞれ異なるため、1人ひとりに合わせたサポートが必要です。
保育士や機能訓練指導員など各分野の専門職で意見を出し合い、保護者からの要望も取り入れて、その子に合った支援計画を練り上げていきます。
保育士は、児童発達支援管理責任者がまとめた個別支援計画書をもとに保育を行います。
専門職が集う児童発達支援施設において、もっとも子どもとの距離が近いのが保育士です。子どもたちの様子を日々観察し、自立心や社会性を育てることを念頭に、状況に応じたサポートを心がけます。
児童発達支援施設の保育士の勤務形態・給料
児童発達支援施設は、放課後等デイサービス※や診療所に併設されているケースもあり、施設により勤務形態や給料は異なります。
※放課後デイサービス:障がいや発達に不安がある6~18歳までの子どもを対象とした福祉施設
参考までに、児童発達支援事業所の求人例をご覧ください。
■保育士の求人例:児童発達支援事業所
項目 | 内容 |
---|---|
給与 | 22万円~ |
手当 | ■通勤手当 ■通勤手当 ■役職手当 ■資格手当 |
待遇・福利厚生 | ■賞与年2回(基本給2カ月分) ■社会保険完備 ■育児、介護休暇制度 ■確定拠出年金 ■薬代補助 |
勤務時間 | 9:00〜18:00 (休憩60分) |
休日・休暇 | ■完全週休2日制(シフト勤務) ■日・祝日 ■年末年始 ■慶弔休暇 ■出産、育児休暇 ※年間休日120日 |
必要資格 | 保育士 |
上記の求人例の場合、月収は額面で約22万円~、年収は約308万円~となります。一般的な私立保育園の保育士の給料と、あまり水準は変わらないかもしれません。
▼保育士の給料についてもっと知りたい方はこちら
児童発達支援施設の運営母体は、社会福祉法人や医療法人、民間企業など様々ですので、職場によっては相場より高い給料も期待できます。
早朝や延長保育がなく固定シフトでの勤務や、土日休みが叶う職場もあります。
障害児保育は、障がいについて学ぶべきことが多く大変ではありますが、その分やりがいが大きく、保育士の専門性も磨けます。
障害児保育に興味のある方は、保育士資格が活かせる職場として、転職の選択肢に加えてもいいかもしれません。
- 障害児保育を実施している保育園は増加傾向!
- キャリアアップ研修の受講などで障害児保育について学ぼう!
- 障害児保育を通して、保育士の専門性を磨こう!
この記事を書いたのは
「教えて!ほいくろにゃん」 シリーズは、
保育士の就職・転職をサポートする「ほいく畑が、保育のお仕事や業界に関する情報をお届けする、お役立ちコラムです。
ほいく畑では、あなた専任のコーディネーターが、今回お届けした情報など専門的な立場からお仕事探しのサポートを行います。
厚生労働大臣認可の就職支援センターなので、利用は無料です。
「お仕事に関する不安や、悩みを聞いてほしい」という相談だけでもOKですので、まずは気軽にご連絡ください!
実は、うちの園に、はっきり障害が分かっているわけじゃないけど、言動が気になる子どもがいて、接し方に迷っていたの。今回話を聞いて、保育士の心構えが分かった気がするわ。
それは良かった。いわゆるグレーゾーンと言われる子どもは、個性と発達障害の見極めが難しいの。気になったら、他の保育士に相談したり、保護者に家庭での様子を聞いてみたりして、慎重に対応してね。
障害について、自分でももっと調べて勉強しよう!子どもに最適な保育は何かを考えて実践していきたいわ。
障害のあるなし、人か猫かに関わらず、みんなで助け合える社会をめざしましょ!
この記事の監修者
本コラムは、「ほいく畑」を運営する株式会社ニッソーネットが、専門家の監修のもと執筆しています。
■監修者
川村 直弘
(かわむら なおひろ)
保育士の就職・転職支援事業の統括責任者として、10年以上にわたり、保育士のキャリアサポートに従事。数百名を超える保育士の支援実績が認められ、各自治体の保育士確保対策事業を長年にわたり受託。責任者として運営に携わり、保育業界の活性化に貢献した。現在は、これまでに培った知識やノウハウを活かし、保育・福祉分野の人材育成に尽力している。
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※グラフは「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会(第4回)/厚生労働省」を参考に当社が作成